気管支喘息は、
夜や明け方に悪化する咳・ゼーゼー・息苦しさ を繰り返す病気です。
吸入ステロイドが普及し死亡者数は大幅に減りましたが、
実は 治療しても症状が残る患者さんが一定数いる(5〜10%) ことが分かっており、
“喘息=薬で治る病気” と決めつけてしまうと診療が上手くいかないケースもあります。
今回は、診断・治療の基本から、難治例で重要になるポイントまで、
なるべく分かりやすくまとめました。
■ 喘息の特徴的な症状
- 夜間・早朝の咳
- ゼーゼー・ヒューヒュー(喘鳴)
- 息を吐きにくい
- 胸が苦しい
- 運動・寒気・アレルゲンで悪化
- 風邪のあとに強くなる
症状は“良くなったり悪くなったり”を繰り返すのが特徴で、
これを専門的には 気道の可逆性・変動性 と呼びます。
■ 喘息が起きるメカニズム
喘息は 気道に慢性的な炎症がある状態 です。
炎症が起こると、
- 気道がむくむ
- 空気の通り道が狭くなる
- 神経が敏感になる
- 少しの刺激で咳や喘鳴が出る
といった変化が生じます。
従来は
「アレルギーが原因(Th2)」
と言われていましたが、
現在は 複数のタイプの炎症がある“多様性の病気” と理解されています。大きく分けて2つのタイプがある
① 2型炎症(Type2-high)
最も多いタイプ。アレルギーに関係。
- IL-4 / IL-5 / IL-13
- IgE
- 好酸球
- ILC2(自然リンパ球)
などが関わり、
アレルギー反応やウイルス刺激で気道の炎症が続きます。
気道上皮が傷つくと IL-33 / TSLP などの“アラーミン” が分泌され、
ILC2という細胞を強く刺激し、炎症が増悪します。
→ こうした患者は 吸入ステロイド(ICS)に良く反応する のが特徴。
② 非2型炎症(Type2-low)
最近注目されているタイプ。
- IL-17
- 好中球
- ウイルス刺激
- 気道感染後の慢性炎症
などが中心で、
→ FeNOが上がらず、ICSが効きにくいことがある。
成人発症の喘息や、喫煙歴のある患者に多いとされています。
■ リモデリングとは何か?
炎症が長く続くと、気道自体の構造が変わってしまうことがあります。
- 粘膜が厚くなる
- 筋肉が増える
- 粘液が作られやすくなる
この「リモデリング」が進むと症状が改善しにくくなるので、
早期に炎症を抑える治療 がとても大事です。
■ 喘息の診断
診断は、問診(症状の聞き取り)が最も重要です。
特に注目するのは:
- 夜間・明け方に増える咳や喘鳴
- 風邪後に悪化
- アレルギー歴
- 家族歴
- 運動や天候の変化で悪化
- 吸入薬で改善するか
これらが揃うほど、喘息を疑います。
● 使われる検査
✔ スパイロメトリー
1秒率が低い(70%以下)と閉塞性障害=喘息の可能性。
吸入薬で改善するかどうか(可逆性)も重要。
✔ FeNO(呼気NO)
- 22ppb以上で喘息の可能性が高いとされる
- 好酸球性炎症の指標
- ICSが効くタイプの見分けに役立つ
✔ 好酸球・IgE
アレルギー体質の評価。
✔ 胸部X線
肺炎や腫瘍などを除外。
■ 喘息の標準治療
喘息治療の“柱”は、吸入ステロイド(ICS) です。
これに症状の強さで以下を組み合わせます:
- 長時間作用型β2刺激薬(LABA)
- 長時間作用型抗コリン薬(LAMA)
- ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
- テオフィリン
- アレルゲン免疫療法
1〜3ヶ月ごとに症状のコントロールを評価し、必要に応じてステップアップ・ステップダウンしていきます。
■ 治療しても良くならないとき(難治性喘息)
全体の5〜10%は、
標準治療をしてもコントロールが不十分な 難治性喘息 にあたります。
原因としては:
- アドヒアランス(吸い忘れ)
- 吸入手技の誤り
- アレルゲン暴露・環境
- 合併症(鼻炎・GERD・心不全)
- 喫煙
- 非2型炎症
- ILC2によるステロイド抵抗性
などがあり、
“治療が効かない理由”を丁寧に探ることが最も重要 です。
■ 生物学的製剤(重症喘息の切り札)
従来治療で改善しない患者には、
以下の 生物学的製剤(抗体薬) が使われます:
- 抗IgE抗体(オマリズマブ)
- 抗IL-5抗体(メポリズマブ)
- 抗IL-5受容体抗体(ベンラリズマブ)
- 抗IL-4/IL-13受容体抗体(デュピルマブ)
これらは
増悪回数の低下・症状改善・経口ステロイド離脱
などに大きな効果を示しています。
■ 喘息の治療で最も大切なこと(ちょっと大事な話)
喘息診療では、
吸入薬を“なんとなく”処方して終わり……という診療が意外なほど多く存在します。
正直なところ、これは本当に問題です。
気管支喘息は、
・2型炎症か
・非2型炎症か
・好酸球が高いか
・FeNOは上がっているか
・気道閉塞はどれくらいか(スパイロ)
という “炎症のタイプ” や “気道の状態” によって
最適な吸入薬が全く異なります。
つまり、
👉「一回吸って良くなった=終わり」
👉「とりあえずICS/LABAだけ出す」
では、本質的な治療になりません。
吸入薬こそ 患者ごとに細かく調整すべき治療 であり、
その判断には FeNO・スパイロ・好酸球などの評価が必須 です。
当院では、こうした検査結果を踏まえ、一人ひとりにとって“本当に適した吸入薬” を選ぶことを大切にしています。

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