夜に咳が止まらない…それ、咳喘息かも?|専門医が最新の病態と治療をやさしく解説

咳喘息とは?夜に悪化する理由と治療のポイントを専門医がわかりやすく整理

「風邪は治ったはずなのに、咳だけが長引いている」

「夜になると咳が強くなって眠れない」

当院でも非常によく見られる相談の一つで、背景として多いのが 咳喘息(Cough Variant Asthma:CVA) です。

咳喘息は 喘息の軽いタイプ と考えられ、症状が“咳だけ”なので気づかれにくいのが特徴です。

ただし背景には喘息と同じような 気道の炎症 があり、早めに治療するほど改善しやすい病気です。

この記事では、専門的な内容を含みつつも、できる限りわかりやすく咳喘息を整理していきます。


■ 咳喘息とは(定義)

  • 主症状が咳だけの喘息の一種
  • 夜間・早朝に悪化しやすい
  • 風邪のあとに長引く咳として出ることが多い
  • 放っておくと喘息に進むことがある(重要)

実臨床では

“風邪後に咳だけが長く残っている人” が咳喘息だった

“毎年寒暖差がある時期に咳だけ出る人” が咳喘息だった

というケースが非常に多いです。


■ 咳喘息の症状の特徴(一般の咳との違い)

  • 夜間・早朝に悪化する

副交感神経優位、乾燥、気道狭小化などが重なり症状が出やすい。

  • 乾性咳嗽(痰が少ない)

ただし副鼻腔炎併存では痰が少量出ることもありますし、感染が少しかぶっていたりアレルギー症状が合わさっているなど上皮障害が強い場合には出ることもあります。

  • 風邪の後に3週間以上続く

自然軽快しない咳は疑う重要ポイントです。

  • 会話・運動・冷気・笑いで誘発

軽い刺激で咳が誘発されるのは気道過敏性の典型的とされます。

割とここはわかりやすくて、多いので診療する上で重要です。


■ 病態生理

咳喘息の多くは、喘息と同じく

「気道が炎症を起こし、刺激に敏感になる病態」 が背景にあります。

この炎症の中心となるのが、いわゆる “2型炎症(Type2 inflammation)” と呼ばれる反応です。

1)2型炎症とは?

家の壁紙が傷つくと中の配線がむき出しになるように、

気道の粘膜がダニやウイルスで傷つくと、

その奥にある神経や免疫細胞が刺激されやすくなります。

このとき中心になるのが、

  • IL-4 / IL-5 / IL-13
  • 好酸球
  • IgE
  • ILC2(自然リンパ球)

などの“アレルギー系”の免疫反応です。

これらはお互いに連動しながら

  • 気道の粘膜を腫らす
  • 神経を過敏にする
  • 軽い刺激で咳を誘発

といった状態を作ります。

つまり咳喘息は、

👉 「気道が敏感モードに入ってしまった状態」

と理解するとシンプルです。

2)2型炎症以外が関わるケースもある

多くの咳喘息は2型炎症が中心ですが、

実は すべてが“アレルギー型”とは限りません。

一部の患者では、

  • IL-17
  • 好中球
  • ウイルス後の慢性炎症(Type2-lowパターン)

といった 「非2型炎症(Type2-low)」 が加わるケースもあります。

👉 こうした非2型パターンでは
  • FeNOが正常
  • 好酸球は高くない
  • ICSが効きにくい

といった特徴が出ることがあります。

3)なぜ“咳だけ”が続くのか?(神経の過敏化)

炎症で粘膜が弱くなると、

普段は反応しないような刺激にも“神経が反応してしまう”状態になります。

  • 冷たい空気
  • 会話
  • 深呼吸
  • 寝る前
  • 笑う

こうした本来なら何でもない刺激で咳が出るのは、

“神経の過敏化(neurogenic inflammation)” が起きているためです。


4)軽いリモデリングが始まることもある

炎症が長く続くと、

  • 粘膜が厚くなる
  • 気道周りの筋肉が増える
  • 粘液が作られやすくなる

など、“構造の変化(リモデリング)” が少しずつ進むことがあります。

咳喘息はこの変化の “初期段階” に位置していると考えられています。


■ 病態のまとめ

  • 多くの咳喘息は 軽いアレルギー型(2型炎症)
  • ただし、一部の患者は 非2型炎症(好中球性) が加わる
  • 気道の炎症が続くと 神経が敏感になり、咳だけが続く
  • 放置すると リモデリング → 喘息へ進行 することがある
  • だから 早めの治療が大切


■ 診断の流れ(わかりやすく)

● 症状パターン

夜悪化、風邪後遷延、乾性咳など。

● スパイロ(呼吸機能検査)

通常は正常〜軽い変化。

● FeNO(呼気NO:好酸球炎症のマーカー)

  • 高め → 咳喘息や喘息寄り
  • 正常 → 感染後咳嗽の可能性も

● 胸部X線

肺炎や他疾患を除外。

● ICS治療への反応

実臨床では最も大事な診断ポイント。


■ 鑑別で重要な病気

咳が長引く患者では、以下とよく紛れます:

  • 感染後咳嗽(FeNOは正常のことが多い)
  • 後鼻漏(鼻炎・副鼻腔炎)
  • GERD(逆流性食道炎)
  • ACE阻害薬による咳
  • 心不全(夜間の咳)

実際には複数が絡むこともあります。


■ 治療

● 第一選択:吸入ステロイド(ICS)

炎症を鎮め、気道の過敏性を改善させます。

● 症状が強い場合:ICS/LABA

改善が早いことが多い。

● 鼻炎がある人:抗アレルギー薬やLTRA

鼻→喉への刺激が咳を悪化させるため。

● 逆流がある人:PPI

夜の咳に関係。

● 治療期間

咳が治っても6〜8週間程度続ける

→ 再燃を防ぐ


■ 咳喘息を放置するとどうなる?

  • 炎症が続く
  • 気道の構造変化(リモデリング)が起きやすくなる
  • 喘息に進行することがある

咳だけだから…と放置せず、早めの治療が大切です。


■ 東松戸クリニックでの診療

咳は “単独の原因で説明できない” ケースが多い症状です。

  • 呼吸器
  • 循環器
  • 総合内科

の三つの視点を組み合わせ、

FeNO・スパイロ・X線、鼻炎や逆流の評価などを総合して

原因を整理していきます。

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