診察室で
「念のため、心臓のカテーテル検査(CAG)をしましょうか」
とお話しすると、多くの患者さんが一瞬動きを止めます。
そして、不安そうな表情でこう聞かれます。
- 「先生、それって手術なんですか?」
- 「入院して、麻酔で眠らされるんですか?」
そのお気持ち、本当によく分かります。
“心臓に管を通す”と聞けば、誰だって怖くなります。
今日は、私たち循環器専門医が治療方針を決める時に頼りにしている
冠動脈造影(CAG)とはどんな検査なのか?
なぜ必要なのか?
痛みや不安はどれくらいなのか?
なるべく怖くなく、分かりやすくお話しします。
■ そもそも「カテーテル検査」とは何か?
正式名称は
冠動脈造影(かんどうみゃくぞうえい)。
心臓に血液を送っている 冠動脈 が
- 詰まっていないか
- 狭くなっていないか を調べる検査です。
やっていることを一言で言えば、
「血管の中にインクを流して、影絵のように血管の形を映す検査」。
流れは非常にシンプルです。
- 手首の血管から細いカテーテル(ストローのような管)を入れる
- 心臓の入り口までスルスルと進める
- 造影剤(インク)を流す
- レントゲンの動画で血管の形を確認する
造影剤が流れた部分だけ黒く色がつくので、
「ここが細い」「ここが詰まっている」
というのが一目で分かります。
■ 「最近はCTがあるのに、なぜカテーテル?」という疑問
患者さんから最もよく聞かれる質問です。
確かに、寝ているだけで冠動脈を映せる 心臓CT は便利です。
私もよく使います。
しかし、それでもカテーテル検査をお願いする理由は、
🔥
カテーテル検査は “ゴールドスタンダード(確定診断)” だからです。
心臓CTは“外から撮る地図”。
一方でカテーテル検査は、
「実際に現地に行って道路状況を自分の目で確認する作業」 です。
だからこそ、CTには以下の弱点があります。
- CTでは狭く見えても、実際は大丈夫なことがある
- CTでは大丈夫そうでも、実はボロボロということもある
治療方針(薬で様子を見るか、ステントか、手術か)を決める最後の判断材料 は、
どうしても カテーテル検査の“本物の情報” が必要なのです。
■ 「手術ではなく“検査”です」
痛み・負担は大幅に減っています
患者さんが一番心配なのは、この部分だと思います。
● 昔
- 太ももの付け根(大腿動脈)から太い管
- 何時間もベッド上で動けない
- 痛みや負担が大きい
● 今
- ほとんどが 手首 から
- 局所麻酔のみ
- 検査中は会話もできる
- 検査時間は30分~1時間ほど
- 終わったら歩いてトイレにも行ける
「手術」というよりは、
精密な“内部のレントゲン検査” と考えていただいた方が実態に近いです。
■ CAGは“曖昧を残さない、裁判官のような検査”
私がCAGを提案する時は、決して迷っている時ではありません。
「心臓の血管に何かある」と強く疑っている時です。
そして、
患者さんの“これから”を決める重大な岐路にいる時です。
- 薬だけでいけるか?
- 風船やステントで広げる(PCI)べきか?
- バイパス手術が必要か?
この “人生の分岐点” を判断できるのは、
カテーテル検査という “裁判官” だけです。
「怖いから避けたい」というお気持ちはよく分かります。
しかし、曖昧なまま不安を抱えて過ごすよりも、
一度しっかり白黒つける方が、長期的に安心して生活できます。
もちろん必要がない場合には絶対に勧めません。
「本当にやるべき」と判断した時だけ、真剣にご提案しています。
■ 最後に:怖がらなくて大丈夫です
カテーテル検査は、
“心臓に何か問題があるかもしれない” と感じた時の
最も確実で、最も強力な味方 です。
怖い検査ではなく、
あなたの未来を守るための検査。
必要な場面で、必要な人にだけ行います。
疑問や不安があれば、何でも遠慮なく聞いてください。


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