カテーテル治療(PCI)の説明をすると、かなり高い確率で聞かれる質問があります。
「先生…これって、いくらかかるんですか?」
命の話をしているので本当は治療が最優先なのですが、
現実問題として「お金の不安」は誰にとっても大きなテーマです。
今日は、
「PCIを受けるとき、いったいどれくらいの費用がかかるのか」
「最終的に、自分の財布からはいくら出ていくのか」
を、できるだけわかりやすく整理してみます。
※細かい数字は病院によって多少変わりますが、「だいたいこれくらい」という目安として読んでください。
ざっくり結論:総額は100〜200万円台、でも本人の支払いは多くの人で10万円前後
いきなり結論からいきます。
- 病院側で計算される 医療費の総額(10割) は → 100〜200万円台になることが多い(ステントの本数や入院日数で変動)
- これをそのまま3割負担で払うと → 30〜60万円くらいになってしまいます
ここで登場するのが、
「高額療養費制度」 です。
この制度のおかげで、多くの方は
「最終的な自己負担は だいたい 8〜10万円前後」
におさまることが多いです(70歳未満・一般的な年収帯の場合)。
「本当にそんなに下がるの?」と思われるかもしれませんが、
これは法律で決まっている“1か月あたりの自己負担の上限”があるからです。
もう少しだけ具体的に:高額療養費制度の「上限」のイメージ
70歳未満の方の場合、
例えば年収が 約370〜770万円くらい の方だと、
1か月あたりの医療費の自己負担の上限は
80,100円+(総医療費−267,000円)×1%
という計算になります。
計算式だけ見るとややこしいですが、
PCIのように医療費総額が高額になるケースでは、
だいたい9〜10万円台くらいが頭打ちになる、という理解で大きく間違いありません。
年収がもっと低い方なら上限はさらに下がりますし、
逆にかなり高収入の方だともう少し上がります。
「3割負担」と「実際に払う金額」は違う
よくある誤解が、
「3割負担だから、200万円かかったら60万円払うんですよね?」
というものです。
実際には、
- まず健康保険で「3割負担」にする
- その月の医療費が高額になった場合は、 高額療養費制度で“上限を超えた分”が後から戻ってくる (あるいは、あらかじめ“限度額適用認定証”を出しておけば、最初から上限額までしか請求されない)
という二段構えになっています。
そのため、
- 例:PCI+数日入院で医療費総額160万円
- 本来の3割負担:48万円
- → 高額療養費で調整 → 実際の自己負担は おおよそ9〜10万円前後
こんなイメージになります。
症例ごとにざっくり費用感をイメージしてみる
もちろん細かい数字は病院ごと・患者さんごとに変わります。
実際の病院の公開データから、雰囲気だけ共有します。
待機的PCI(狭心症で、予定入院)
- 入院:2〜4日程度
- ステント:1本前後
- 医療費総額:100〜200万円前後
- 高額療養費を使ったあとの自己負担: → 一般的な年収帯の方で 数万〜10万円ちょっと のことが多い
複雑なPCI(ステント複数・病変が多い)
- 入院:4〜7日程度
- ステント:2〜3本以上
- 医療費総額:200万円〜
- それでも、同じ月の医療費であれば → 自己負担の“上限額”自体は大きくは変わりません (差が出るのは、入院が月またぎになる時 など)
急性心筋梗塞での緊急PCI
- 救急搬送+ICU管理などが加わると総額は一気に跳ね上がります
- しかしこれも、 「同じ月の医療費」であれば高額療養費制度の範囲に入ります
- 実際には「差額ベッド代」「食事代」がじわじわ効いてくるケースが多いです
注意しておきたい「医療費には含まれないお金」
ここは患者さんが見落としがちなポイントです。
- 入院中の 食事代(1食あたりの定額)は自己負担
- 個室代・特別室代(差額ベッド代) は全額自費
- 付き添いの交通費・宿泊費なども当然自費
つまり、
医療費そのものは高額療養費で“上限付き”
だけど、快適さに関わる部分は別枠でかかる
というイメージです。
入院前にやっておくと本当に楽になる「たった1枚の紙」
実務的に一番大事なのはここです。
「限度額適用認定証」を事前に取っておくこと。
これを保険者(協会けんぽ・健保組合・国保)から発行してもらい、
入院前に病院に提出しておくと、
- 退院時の会計で「3割負担の金額」ではなく
- 最初から“高額療養費の上限額まで”しか請求されません
逆に言うと、これがないと、
- いったん3割負担分(数十万)を支払う
- 後から高額療養費として払い戻し
という流れになり、一時的な出費がかなり重くなります。
民間保険(医療保険・生命保険)も見直す価値あり
もうひとつのポイントは、
「PCIは多くの保険会社で“手術給付金”の対象になっている」 ことです。
- 入院給付金(日額)
- 手術給付金(○○万円)
これらが出ると、
高額療養費制度と合わせて 自己負担が実質かなり軽くなる ケースもあります。
「保険に入っているけど、何が出るのか分からない」という方は、
一度ご自身の契約内容を確認しておくと安心です。
まとめ:お金の心配は“早めに一緒に整理”した方がいい
PCIは決して安い治療ではありません。
ただし、日本の医療制度と保険をうまく使えば、
「数百万円の治療を受けても、自己負担は数万〜十数万円程度で済む」
ということが多いのも事実です。
- どれくらい費用がかかりそうか
- 高額療養費制度をどう使うか
- 限度額適用認定証をいつ出すか
- 保険の給付は何が出そうか
こういったお金の話も含めて、
気になることがあれば遠慮なく聞いてください。
カテーテル治療は、
命と生活の質(QOL)を守るための大事な一手 です。
「お金が心配だから…」と怖さを抱えたままにせず、
一緒に整理しながら、安心して治療に進めるようサポートしていきます。


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